入国管理局その3 呼び出し

 入国管理局より627日午後13時、子供たち本人を連れ父親である私と3人で出頭するよう連絡がありました。前回の出頭、違反調査から2週間余りしかたっていません。追加の調査なのか、それとも許可がもらえるのか何も言われないので不安半分、期待半分で当日、学校、幼稚園をそれぞれ早退させ時間どおり子供たちを連れて出頭しました。

 窓口で書類を提出し、15分程待っていると担当の女性が出てきて、「今日は少し長くなります。途中で外に出る事はできませんのでトイレに行っておいて下さい。」とのこと。その後子供たちを連れてトイレを済ませ、これからの流れを説明してもらいました。「これより収容令書により収容します。部屋からは出られません。そして入国審査官の違反審査、特別審理官の口頭審理、法務大臣の裁決と一気に行います。」と言われました。ここで今日子供たちの在留許可がもらえる事がわかりました。事情を考慮してとても速く処理してくれたという事です。そして収容です。部屋に閉じ込められるのです。ちょっと不安でしたが、部屋に案内されるとそこは普通の待合室です。テレビがあり、子供用の本も何冊か置いてありました。安心しました。ただ入口にはカギが掛って出る事はできません。次は入国審査官の違反審査ということなのだろうと考えながら暫く待っていましたが1時間が過ぎ、2時間が過ぎても何の動きもありません。最初本を読んでいた子供たちもそろそろ限界になってきました。「のどが渇いた。」「お腹が空いた。」とぐずり始めじっとしていられなくなってきました。そして待つ事3時間。ようやく一人の男性が書類を抱えて入って来ました。何をするのかと思ったら次々に書類を読み上げ私の署名捺印を求めます。容疑者供述調書という様なもの数枚と宣誓書みたいなもの、その他十数枚の書類に署名しました。それを二人分です。そして在留カードを渡されて終わり。結局待っていた間は一体何をしていたのだろう?書類を作っていたのでしょうか。部屋から出してもらえた時はもう5時少し前、子供たちはぐだぐだでした。しかしこんなに早く在留許可がもらえるなんて思ってもいませんでした。入管の方にはとても感謝しています。

さあ、これで住民票に子供たちが帰って来ます。さっそく明日、市役所へ届けよう。

そして次は日本国籍への帰化です。

入国管理局その2 在留特別許可

必要書類を揃えて2度目の入国管理局への出頭です。

外国人になってしまった子供たちが、これからも今までどおりに日本で生活するには日本の在留許可が必要です。そのための手続きをするのですが、これが簡単には行かないのです。というのは、国籍喪失による在留資格取得申請の提出期限は国籍喪失届出のように「国籍喪失の事実を知った時」とはなっておらず、「資格の取得の事由が生じてから30日以内」となっているからです。私の子供たちの場合、結果として国籍喪失からそれぞれ8年と5年も経っています。当然申請は受理してもらえません。もう申請する方法がないのです。しかしこのままでは日本で暮せません。そこで唯一残された道が在留特別許可というものだそうです。それは、「不法滞在状態の外国人は本来日本から出国するか退去強制されなければならないが、出入国管理及び難民認定法入管法)第50条に従い法務大臣はその裁量により在留を特別に許可することができる。」という法律です。これは在留期間を超えてしまった外国人が、長年日本に滞在し、その子供たちが日本の学校に通っている場合など人道的配慮から出されるもので、決まった基準もない法務大臣の裁量的処分です。在留特別許可が出るまでの流れは、こうだそうです。

入国管理局への出頭

入国警備官の違反調査 ←(今はここ)

収容令書による収容

↓(仮放免の許可により、収容されることなく手続きを進める事が可能)

入国審査官の違反審査

特別審理官の口頭審理

法務大臣の裁決

↓        ↓

在留特別許可   退去強制令書発付・送還

以上の手続きが必要になります。

私たちの場合、状況から見て何も心配ないと入管の担当者は言ってくれますが、すべての手続きが必要なので時間がかかってしまう様です。23カ月から半年、遅い人は1年以上待っている人もいるそうです。一刻も早く許可が出るのを祈って待つしかないようです。

国籍喪失届 その2

戸籍から消え不法在留の外国人になってしまった息子と娘。私の住民票には、もう2人の名前が消えていました。全くどこにもない。昨日まで私の子供として載っていたのに。

すぐにその影響が出ました。今日は朝から、何度も電話が鳴る。市役所の「教育指導課」「福祉医療課」「子ども家庭課」からだった。それぞれ課へ来て下さいとの事。先ず、「教育指導課」へ行く。長男の小学校の問題です。外国人は義務教育の枠から外れる事から、学校へ行くには特別の届け出が必要らしい。3枚ほどの紙に内容を確認して親が署名捺印するのですが、その内容が情けないのです。「給食費等は必ず期限までに払います」だとか「他人に迷惑をかけないように」だとか昨日まで普通に通っていた小学校なのに今さら…。次は「福祉医療課」私の市では中学生までの子供は医療費が全額タダ。市が負担してくれるのです。住民票に名前がないのだからこれからは自費かなと思い話を聞くと、なんと「これまで負担した分も返還して頂く可能性があります。」だって。唖然としていると、あちらの言い分はこうでした。「国籍の喪失は届出をした時ではなく、実際に喪失が起きた時だという事。」そう、ロシアのパスポートを取得した8年前と、5年前まで遡ってしまうのです。消滅時効が5年ですので、5年前の分からは返さなければいけないという事なのです。国籍喪失の事情を説明すると、検討してみるとは言ってくれました。最後に「子ども家庭課」です。ここは児童手当を担当する課です。先ほどの件でもう内容は大体わかります。そう、やっぱりここも過去5年分の児童手当を返還してくれとの事。こちらはもうしっかりと金額も計算されていました。二人でなんと約90万円。間違って失くした国籍、昨日まで普通に日本人として生活していたのに。あまりにもひどい。以前の子供手当は、外国人が海外に残してきた子供にも支給され問題になっていました。なんでうちだけこんな目に?到底納得できない旨告げると、1度では無理でしょうから分割等話には乗りますとの事。

まだ他にも影響が出るのか不安は募るばかり。

国籍喪失届

国籍についてどれだけの人が考えたことがあるのでしょう。

親の国籍が違えば両親それぞれの国籍を持つんじゃないの?

20歳までにどちらかの国籍に決めればいいんじゃないの?

こう考える人が大多数なのではないでしょうか?どこで誰に教えてもらったかは解りませんが、少なくとも私はこう理解していました。

市役所に国籍喪失届を提出しに行ってきました。これで正式にうちの子供たちが日本の戸籍から消えてしまいました。日本人としての名前も失ってしまったのです。漢字の名前はもうどこにもありません。これからはアルファベットです。可哀そうでなりません。市役所の担当者によると5年ほど前にも同じ様な事が2件あったそうです。事情を踏まえ親切に素早く処理してくれましたが、親の無知とは言えこうなる前にどこかでなんとかならなかったのでしょうか?ロシア人との婚姻届提出の時、または子供の出生届の時、市役所から一言注意があれば、ロシアパスポート取得の時は、日本の国籍が無くなる事をロシア側が言ってくれれば、等色々考えてしまいます。日本は法治国家、知らないでは済まされない事はよく解っています。でも、でも…

色々愚痴を言っていてももう国籍は戻ってこない。こうなったら少しでも早く、子供たちのためにしてやれる事をやるしかない。今やれる事は、必要書類を集め、入管に出頭し、外国人となってしまった子供たちの在留許可を取ってあげる事だ。そしていつかは日本の国籍を再度取得して日本人に戻してあげる。

入国管理局 不法入国

6月10日(月)朝9:00、近くの地方法務局へ行ってきました。

「金曜日、子供たちのパスポートを申請に行ったんですが、国籍がない可能性があるため発行できないと言われてしまい、法務局へ行くように言われたんですが」と告げ、詳しく経緯を説明すると、あっさり「お子さんは国籍を喪失しています。市役所へ行って喪失届を提出して下さい。入国管理局にも問い合わせてみて下さい。」

覚悟していたとはいえあまりにも簡単に言われ…。

自宅に帰り、入国管理局に電話で問い合わせ、事情説明すると、「お父さんですね、では出頭して下さい。」とのこと。出頭?なにそれ?犯罪者になったの?

 電車で1時間かけ、入国管理局に出頭。出頭申告窓口にて子供たちの日本のパスポートと母親のロシアのパスポートを提出。30分程待たされた後、中へ案内され、こちらから詳しく経緯を説明し、その後いくつかの質問を受けました。担当者はまだ30歳前の優しそうな女性でした。少し待つように言われ女性は席を立ち、5分程で戻って来ました。

そして子供たちについて、「ロシアのパスポートを取得した時点で日本国籍は喪失しています。それ以降日本のパスポートは無効ですので言葉は悪いですが、あなたのお子さんは不法入国になってしまいます。そして今現在、在留許可のない外国人という不安定な状態です。」と説明してくれました。不法入国とは、去年の夏の海外旅行で、無効となっている日本のパスポートを使って出入国した事が最後の違反だというのです。事情が事情なので…と同情的に話をしてくれました。今後の手続きについて説明を受け、「これだけの書類を揃えてもう1度出頭して下さい。」と紙を1枚渡され終了です。

やっぱり子供たちはもう日本人じゃないんだ。何でこんな事になるんだろう?こんな簡単に国籍がなくなってしまうなんて。

何が問題なの?

 

大問題発生から二日間、パソコンの前に張り付き、「日本国籍」「ロシア国籍」「国籍喪失」「日本国籍ロシア」等様々なワードを検索し、この問題について調べ上げました。

その結果解ったのが以下の3つの法律でした。

日本国籍111項「日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。

ロシア国籍法 200271日以降に一方の親がロシア国籍で、一方の親が外国籍である両親からロシア国内で出生した子は、ロシア旧国籍法12条B項の規定により出生に伴いロシア国籍を取得する。一方の親がロシア国籍で、一方の親が外国籍である両親からロシア国外で出生した子に関しては、外国籍を取得せず、無国籍となる場合のみ出生に伴いロシア国籍を取得する。

ロシア国籍法14条第6項Aに規定する手続に則り、両親の合意文書による申請に基づき、ロシア国籍を取得することが可能である

この3つの法律から、

1.日本国籍は新たに外国の国籍を取得するとその時点で喪失する。

2.ロシア国籍は、一方の親が外国籍の場合、ロシア国内で生まれた者だけが取得する。

3.子が出生に伴いロシア国籍を取得しなかった場合申請により新たに取得できる。

という事が解りました。

私の子供たちは何が問題なのか良く考えてみました。この問題が起きたきっかけはロシア国籍である母親のパスポートに子供たちの写真が載っていることでした。

何故写真が載っているのか?それは、子供たちはそれぞれ生まれてから1年程後に母親とロシアに里帰りをしています。この時、ロシア大使館から子供たちがロシアに入国する際、ロシアのパスポートかビザが必要だと言われました。子供たちは2重国籍なんだから両方のパスポートを持っていた方が便利だと思い、発行の申請をしたのです。

ここで大きな間違いをしていた様です。

子供たちは生まれた時点では、日本の国籍しか持っていなかった。

ロシアへのパスポート申請は、国籍を取得する行為だった。

結果、子供たちは日本国籍を失ってしまった。

どうやらこういう事らしい。

 

国籍がない?

先ずは私の家族を紹介します。

私、(日本人)妻(ロシア人ロシア国籍)2002年に結婚しました。

2003年長男、2007年長女がそれぞれ生まれ、現在4人家族です。

長男、長女ともに日本で生まれ、日本で育ち、他の子供たちと同じように幼稚園に行き、小学校に通っていました。もちろん日本の戸籍を持ち、住民登録もしてあります。二人とも、日本のパスポートを持ち、毎年12回の海外旅行もしていました。

 ところが、67日(金)パスポートの更新に訪れた際、大問題が発生しました。

更新の申請窓口で、「あなたのお子さんは新たにロシアの国籍は取得していませんか?」と聞かれたのです。長男は2度目の更新です。こんな事を聞かれたのはもちろん初めてです。当然子供たちは二重国籍であり生まれた時からロシアの国籍も持っていると理解していましたので「何も変わってませんよ」と答えました。すると、今度は「お母さんのパスポートに子供の写真が載っていませんか」と聞かれたのです。確かにお母さんのロシアのポスポートには子供の写真が載っていますので、そう伝えると、急に誰かを呼んで相談しだしたのです。暫くして耳を疑うような言葉が返ってきました。「あなたのお子さんは日本の国籍を失っている恐れがあります。パスポートの更新はできません。」と言われてしまったのです。何がどうなったか解らず茫然としている私に、「法務局の方へ問い合わせてください。」と言うだけです。慌てて自宅に戻り、法務局に電話を入れようと思いましたが、すでに時間は5時を過ぎています。明日は土曜日。月曜日まで問い合わせもできません。

「月曜日まで待てない。」

「もうこうなったら自分で調べるしかない」

「私の息子と娘はどうなってしまったのだろうか」